人々の一生に100の花・1000の花を咲かせる仕事----。
日比谷花壇「花のある暮らし」メインデザイナー石井千花のブログです。
2016年March01日
2016年March16日
まだ雪の散らつく3月の頭、和歌山県の世界遺産『高野山』へ。
空海が切り開いた真言密教の聖地として知られる高野山、私にはその歴史的な背景よりも興味深くとても楽しみにしていることがありました。
標高900mと、何せ山深く、最後は急斜面をゴンドラで進みようやく辿り着くことのできる日本のマチュピチュ。樹齢300年から500年の木々でできた森を、私は楽しみにしていました。
実際に足を踏み入れた時に感じた、その木々から発せられる清らかな空気や香り、静けさとパワーに心が輝いてしまいました。
この森にはありとあらゆる戦国武将や日本の歴史に名を残した方々の慰霊塔やお地蔵様が何千と立ち並んでいます。
見上げると空の彼方まで伸びるような木々はスケールが大きすぎて、なかなか写真ではお伝えすることが難しいのですが、神秘的な森はとても魅力的なものでした。
30分ほど歩いて到達した丘の上からの神々しい山並み・・・。
高野山のお寺や宿坊を歩いていると、お正月飾りのように切り絵のようなものが飾られていて、説明を受けるとそれは高野山ならではの物でした。
冒頭にも書きましたが高野山の標高は約900m。約3000人の集落になっていますが標高の高さから、稲作ができないそうなのです。そこから、お正月飾りには稲わらを使用することができず、干支や縁起物の宝船などをモチーフにした『宝来』と呼ばれる切り絵を飾るのだそうです。
この申の宝来は宿坊で制作体験をさせて頂き1時間かけて作った物なんですよ!
そして、本格的な精進料理も高野山で初めて体験することができました。
花びらを模した飾りや季節の色合いが美しいお料理は、多少(かなり?)訪れた人向けの物ではあると思いますが高野山の思い出に美しく彩色が加わったような気がします。
1000年の森に触れ、木々や苔に魅了され、静けさを堪能し、心に風を通し・・・。
初めての風景や体験に刺激を受けながらも心穏やかな素敵な2日間でした。
2016年March28日
3月の花教室は『春の球根花と珍種ラナンキュラスのナチュラルアレンジメント』
私自身がムスカリや水仙といった春を代表する球根の花が大好きなのでこの季節は必ずこういったレッスンになります。
アレンジ中央のひらひらとした大輪花が珍種ラナンキュラスの『ラックス・アリアドネ』。パールのように艶やに光ります。
この日生徒さんにお伝えしたポイントは…。
「どこに太陽が昇っているかをまずイメージして、花たちがその太陽に向かってのびやかに成長している雰囲気で。ただ、みんなが同じ方向を向き過ぎているのは不自然。時折強い風になびく繊細な草花も存在するし、やんちゃに茎を曲げそっぽを向く花もいる。太陽に向かうという法則と個性を重視した自由さを作品の中に同居させてください。」という事でした。
このように素材を水平に立てたり交差させるあしらいはとても難しいのです。人工的で直線的なあしらいになると自然な印象にはならないですし、茎が交わるようなか所が多すぎれば雑多な印象になってしまいます。
ひっそりと足元にたたずむ1輪も大事な表現のひとつ。
私はこの日のアレンジ、レッスンの花材には入っていなかったパンジーとペンペン草を加えてお部屋に飾っています。
今日は冷たい雨ですが桜も咲き始めました。
春の花たちや春の風景は心が晴れやかに元気になりますね。みなさんもたくさんの春を感じて笑顔でお過ごしくださいね。
驚くほどの暖かさと寒さのくりかえし…。
みなさんは体調など崩されていらっしゃらないでしょうか…?
2月の最終週は盛りだくさんの一週間。まずは真冬の北海道へ帰省。
毎年雪のシーズンに1度は足を運びますが何度見てもこの無駄のない風景が大好きです。
白とこげ茶とブルーで世界は成立してしまう・・・。
今回の帰省も馬友のお見舞い。2日間にわたり、マッサージやブラッシング、おしゃべりをしながら一緒に良い時間を過ごしてきました。
大都会に暮らす私には、時折最低限の色と音しかない世界が必要です。この2日間の最低限の音…。
それは馬友グレンの寝息でした。地響きくらい大きいですけどね。
そして東京へ戻り最初のお仕事はカラフルな鳥たちのような色のチューリップを使った花教室。
赤い模様が情熱的な「ケープランドギフト」。右奥のユリ咲き種は「プリティウーマン」。
まさに羽根のようなアプリコットパーロット。
最小限の色の中に身を置き目をクリアーにしてきたせいか、どの色も一際鮮やかで美しいと思いました。
そして個性的。
これだけ個性を放つ花たちも、こうして自然界のように緑で境目を作ってあげればお互いを尊重し合いお互いを引き立て、違和感なく調和しますねぇ。
それって、このブーケに限らず色々なもの、こと、に通じていますね。改めて心にメモした次第です。